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薄紅に染まる
薄紅色の花が満開に咲き誇る中、彼女が長蛇の列に消えたのは十数分前。戻ってきた彼女は、頬と、買ったばかりのワンピースをぐっしょりと濡らしていた。
「だ、大丈夫……?」
嗚咽を漏らしている彼女に一瞬言葉を失い、慌てて口を開く。
どう見ても大丈夫じゃないのにばかなことを聞いてしまった。
「ごめん、なさ……っ」
「仕方ないよ、あんなに混んでるし。俺の方こそ、気付かなくてごめん」
そわそわと落ち着かない様子には気付いていたが、切羽詰った顔で袖を引かれるまで、トイレを我慢していたとは全く思わなかった。
「気にしなくていいよ。うち近いし、着替えていきなよ」
「……うん」
頬を染めた彼女がそれでも可愛らしくて愛おしく感じた。
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